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肥料の活用、石膏の使用などを後押しすることが望ましい。

 

3.援助方法について、次のことに留意しなければならない。現在のパキスタンの灌漑システム管理は、中央集権から分権化の方向にあり、灌漑に関わる意思決定が州政府、さらにはその下の県や郡レベルにまで分権化される可能性が強い。とすれば援助に関しても中央政府ではなく、少なくとも州レベルでの協議が重要となる。
また、先に述べたように、パキスタンでは灌漑管轄官庁の再編が予定されており、この動向を見極めた上での援助が必要となる。
さらに、灌漑プロジェクトの場合、対象が村や圃場水路の水利組合などのように限定された社会集団とならざるを得ず、農村資源の動員や維持管理のために農民の参加がプロジェクトの成否を決める要諦となる。この場合、社会科学的発想にもとづき、農民への受け入れやすさや農民指導者の組織化など考慮したプロジェクトが必要である。これが、パキスタン国に直接関係する調査の報告です。

 

では、最後に基本的な考えを述べさせていただきたいと思います。これは食料安全保障の問題についてです。世界全体から見た食料安全というものについてお話しします。
世界の人口の15%くらいが栄養不良と言われています。この栄養不良の人口を先進国と同じように養うためには、さらに多くの食料が必要です。
その食料の生産は、時間と各種の制限がなければ、私は可能だと思います。しかしそこには別の問題があります。例えば、現在食料供給の方が消費より上回っておりますが、飢餓はなくなっていません。現在、食料供給が可能であっても、それは非常に高い値段となり、価格が上がり、その価格では栄養不良の15%の人々が消費ができないというところに矛盾があります。この矛盾を解決するための方策を見いだすことこそ将来の人口と食料問題に対応する上で根本になると思います。
もし、世界の貿易が完全に行われ、貿易の自由が完全に徹底した場合には、食料の不足しているところに、余っているところから移動し、受給調整ができるというのが、現在、WTO等で考えている対応策です。
しかし、問題は世界の貧困の国々は食料がないのではなくて、購買力がなく、食料消費ができないのです。世界の貿易を自由にしようという考え方の基になっているのは、貿易の自由化によって食料不足の国が生産を増やし、食料を買うだけの購買力をつけるという考え方であると思います。
しかし、食料は、国際間で貿易で自由に動くかもしれませんが、それが常に自由に動くとは限りません。凶作などの場合、食料生産国は、輸入国に必ずしも食料を提供しません。ここに、食料の不足の問題、供給不安定の問題が生まれ、食料安全保障の

 

 

 

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